9/20にワイドナショーで取り上げられたことが関係しているのか、ここ数日は特にHSPについてのTweetを目にすることが増えたなと感じています。(ただ私がゴロゴロしていてTwitterを見る時間が増えただけなのかもしれませんが)
兎にも角にも、このHSP、現代社会において知っておくべき言葉であるのは間違いないと思っています。
HSPとは?
HSPとはHighly Sensitive Personの略で「とても敏感(あるいは繊細)な人」という意味の概念です。この概念は、アメリカの精神分析医で学者のエレイン・アーロンによって、1996年に提唱されたものです。世の中のおよそ5人に1人がHSPといわれています。
HSPは、決して病気ではありません。
人を、とても敏感なタイプ(HSP)と、タフなタイプの2つに分けただけのことです。
要は、人のタイプを表す概念です。
HSPの認知度が高まる中での懸念
「HSPに当てはまる気がする背景に、何か別の病気があるのではないか?」
ある医療職の方はTwitterでこのような指摘をされていました。
これはもっともな指摘です。元来の気質であるかもしれないし、病気が原因で引き起こされている症状の一つであるのかもしれません。
あくまで敏感であることが分かっただけで、病気の有無は定かになっていません。
他方で次のような声も複数上がっていました。
「目から鱗」
「HSPという性質があると知って、少し楽になりました。」
これまで、自分では説明できない「生きづらさ」を抱えてきた方や、自分の性格に問題があると感じて悩んできた方など、HSPという概念を知って何とも言えない救われた気持ちになった方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。
HSPという言葉が広く知られるようになったことは評価すべき
HSPはあくまで概念であるが、これまでその概念すら知らずに生きてきた方たちにとっては、長年密かに悩んだり苦しんだりしていたことの言語化が出来るきっかけとなったのではないでしょうか。
チェックリストや診断ツールというものが広まってきているため、「もしかしてわたしもHSP?」と考える人もこれからも多くなっていくことが予想されます。そのこと自体は何も悪いことでは無いと思います。
「HSPであるか、ないか」の判別に終始し、何も根本の解決に至らないというのは望ましいことではありませんので、これが単なるブームで終わらないようメディアの発信や私たちの情報の受け取り方には努力が求められると思いますが、まずは広く人々にHSPが知られるきっかけになったと喜ぶべきことではないかと思います。
HSPへの理解を深めるための一冊
HSPという言葉に出会ったのであれば、一度は触れて頂きたい思う本を一冊をご紹介したいと思います。
イルセ・サンという方が著者の「敏感な世界に生きる敏感な人たち」という本です。
優しい言葉で日本語に訳されており読みやすいです。、
専門的な言葉も殆ど出てきません。
恐らく、「自分はHSPなのかな」と感じている方にとっては、今までうまく表現できなかった思いや感情に触れることができるのではないでしょうか。
以下には幾つか表現を抜粋させた頂きました。
敏感な人の多くは、自己評価が低いのです。
「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」 イルセ・サン
努力し続けるのをやめて、ありのままの自分でいることが許された経験をすれば、自尊心を取り戻せます。
「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」 イルセ・サン
HSPの人たちは、自分とはまったく異なるタイプの行動が評価される文化で生きてきました。HSPのなかには、ほかの人たちから期待される通りの元気なキャラクターでいようと苦心し続け、本来のマイペースでおとなしい自分の性格を受け入れられたのは、年金生活に入ってから、などという人もいます。
「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」 イルセ・サン
HSPの人は、第一にありのままの自分を好きになる必要があります。そして、自分にとって過度となる刺激が生じないよう、周囲の環境を整える必要があります。それができれば、問題の多くが自然と解決され、ぐんと上手に立ち回れるようになり、人と関わることに非常に意欲的になり、社交性が出てきます。
「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」 イルセ・サン
ほかの大半の人と同じように、タフでエネルギーに満ちあふれた人間になろうとするのはやめて、その代わりにとても敏感で感受性の強い自分を受け入れ、繊細な自分にぴったり合った人生設計をするのです。
「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」 イルセ・サン
ソーシャルワーカーの1人としてHSPに対する私の考え
HSPは気質です。そして先に述べたように概念です。
巷で広まっているチェックリストで「HSPだった」「HSPじゃなかった」と安易に診断している様子には違和感を覚えます。
別に
「敏感だって、繊細だっていいじゃないか」
と思います。
しかし、注目を集めているこの機会に、多くの人にこの気質を知り理解して頂けたら良いなとも思っています。
HSPに限ったことではありません。「他者」を知り理解する機会になれば良いなと願っています。
多様性、ダイバーシティという言葉も少し前からよく使われるようになってきました。
自分以外の他者を知り、理解することが多様性の尊重に繋がるのではないでしょうか。
HSPが単なるブームに終わらず多様性の尊重を考えるきっかけとなってほしいものです。
参考文献
「鈍感な世界に生きる敏感な人たち」 イルセ・サン