認知症との関わり方 長谷川和夫さんの著書より

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介護職の方、身近な方の介護をされている方は必読!

今は介護が身近でなくても、これからの生き方を考えるという意味では、どなたが読んでも勉強させられる本だと思います。

「ボクはやっと認知症のことがわかった」

ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言

2019年12月に「ボクはやっと認知症のことがわかった」という本が出版されました。

この本の著者である長谷川和夫さんとはどのような方なのか?

そして、この本から学べることは何なのか?

以下に書かせて頂きます。

長谷川和夫さんとは?

1929年生まれの精神科医で、「長谷川式認知症スケール」という認知症検査に用いる方法を考案された方です。介護に関わる方の多くは、「長谷川式」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

長谷川和夫さんは、2018年に自ら認知症であることを公表されました。

2020年2月で91歳になられています。

最近でも、本の出版以外にもテレビや雑誌の取材を受け、ご自身のありのままの姿を公表し続けておられます。

以下はのリンクは「NHKスペシャル」で取材を受けられた内容です。

公表することで、正しい知識を広める機会に

どのような病気でも、病気にかかったことはなるべく他の人に知られたく無いというのが多くの人の本音ではないでしょうか?

それに対して、長谷川和夫さんは自身が認知症であることを世間に公表しました。

そこには「正しい知識を広めたい」との思いがあったようです

長谷川さんのような治療や研究の第一人者が認知症であることを公表すれば、同じ病気の人たちに「認知症でもありのままに生きたら良いんだよ」とエールを送ることにもなると思います。そして、それは認知症の方たち自身が病気への不安を軽減させることに繋がるのではないでしょうか。

この本からは何が学べる?

認知症ケアに携わる者の心構え・基本姿勢が学べます。

そして、認知症患者本人として長谷川さん自身の思いも随所に書かれていますので、認知症当事者を理解する為の手段としても活用することができます。

認知症ケアに携わる姿勢

何も分からないと決めつけない、本人抜きに勝手に物事を決めない

認知症の方であっても、あくまでも1人の尊重されるべき人として扱われることが最優先事項ではないでしょうか。

文章にしてみると、ごく当たり前のことのように見えますが、現実はそうでもありません。

著書でも触れられていますが、病院の受診や介護サービスの利用においては、本人は置いてけぼりで話が進められるということが高齢者の周りではよくあります。

また、介護に携わっていると遭遇する場面が多いと思うのですが、本人が病院や介護を嫌がる場合があります。必要なことなので何とか受けてもらう為に、こちらも必死に嘘を交えてでも説得したという経験がある方もいると思います。

しかし、始めから認知症だからしょうがないと決めつけてはいないでしょうか?

長谷川さんの著書にはそのような問いかけも含まれています。

パーソン・センタード・ケア(その人中心のケア)とは、介護を学ぶ上で1度は耳にするはずの言葉ですが、これを実践する上で欠かせない自立支援や尊厳の保持について学ぶことができます。

自立支援尊厳の保持、これらもまた介護を学ぶ方であれば必ず教わる概念です。

堅い印象を受ける表現でイメージもしづらいので。人によっては受け付けにくい言葉かもしれません。

そうでなくても胸を張って説明や実践ができるという方はどれぐらいいるでしょうか?

しかし、長谷川さんは著書の中で分かりやすい言葉や説明を織り混ぜて、具体的にそのような自立支援や尊厳の保持とはどのようなことを指すのか多くのヒントを散りばめておられます。

当事者の理解

長谷川さん自身が体験したデイサービスやショートステイの様子を踏まえて、当事者たちの声を著書の中で代弁しています。

また、多くの認知症患者を医師として見て来られたため、様々な認知症の捉え方をご存知です。

認知症の当事者としての視点と、これまで培ってきた認知症専門医として視点。

これらが合わさることで、具体的でありながら学問的でもある、そんな記述になっています。

これまでの研究の総まとめのような視点で自身の病気と向き合い、更に新たな気づきを得ておられるのではないでしょうか。

いずれにせよ、長谷川和夫さんにしか見ることのできない視点で語られている認知症についての本という点に、とても価値があります。

長谷川和夫さんの他の書籍

最後に、長谷川和夫さんの他の著書も合わせて紹介します。

よくわかる認知症の教科書

よくわかる認知症の教科書 (朝日新書)

認知症を公表される以前に出版された著書です。教科書というタイトルだけあって認知症の基礎が分かりやすく書かれています。

認知症ケアの心

認知症ケアの心―ぬくもりの絆を創る

こちらも認知症を公表される前の著書です。先ほどの著書よりも深く踏み込んだ、認知症ケアの本質について綴られています。

だいじょうぶだよ -ぼくのおばあちゃん-

だいじょうぶだよ―ぼくのおばあちゃん

絵本も出版されています。こちらは認知症を公表された後の作品。絵本として出版することで、子どもの世代も含め、「認知症の正しい知識を広めたい」というお考えがよく伝わります。

まとめ

長谷川さんは、クリスティーン・ブライデンが認知症を公表した際の言葉である「私は最も私らしい私に戻る旅に出るのだ」を引用し、

「私も旅に出ています」という旨の発言をある雑誌のインタビューでされていました。

認知症であっても「私らしく」・「自分らしく」を本人が如何に実現できるか?

そこに長谷川さんが著書で述べておられる認知症ケアの本質があるのではないかと私は考えています。

介護のお仕事をされている方、身近な方の介護をされている方はもちろん、この人生100年時代を生きる全ての方が1度は触れても良い本ではないでしょうか?

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